「犬が言うことを聞かない。これってナメられてるのかな……」

そんなふうに悩んだことはありませんか?

犬との関係において「主従関係が大切」「飼い主がリーダーにならないとダメ」といった情報を目にする機会は今も少なくありません。しかし実は、現在の動物行動学では「犬と飼い主に主従関係は必要ない」という考え方が主流になっています。

この記事では、なぜ主従関係という考え方が誤解されやすいのか、そして犬が安心して従える関係を築くために本当に必要なことは何なのかをお伝えしていきます。

正しい知識を身につけて、愛犬との信頼関係をより深めていきましょう!

犬と飼い主に「主従関係」が必要だという考えはなぜ誤解されやすいのか

犬のしつけにおいて「主従関係」という言葉は、今でも根強く残っています。

しかし、この考え方は現在の動物行動学では否定されているものです。ではなぜ、誤解されやすいのでしょうか。

ここでは、主従関係という考え方がどのように広まり、なぜ今も信じられ続けているのかをお話ししていきます!

そもそも「主従関係」とはどういう意味で使われてきたのか

主従関係とは、もともと「支配する側」と「従う側」という上下関係を指す言葉です。

犬のしつけにおいては、「飼い主が上、犬が下」という序列を明確にすることで、犬が言うことを聞くようになるという考え方として使われてきました。たとえば、「飼い主より先にご飯を食べさせてはいけない」「散歩では飼い主が先に歩くべき」といったルールは、この主従関係を意識したものです。

こうした考え方は、犬を支配的にコントロールすることが望ましいという前提に基づいています。

昔の犬のしつけ理論が今も残っている理由

主従関係を重視する考え方は、1970年代ごろに広まった理論に基づいています。

当時は、犬の祖先であるオオカミの群れにおける「アルファ(リーダー)」と「下位個体」の関係をモデルに、犬のしつけが語られることが多かったのです。しかし、この理論は後に「誤りだった」と研究者自身が訂正しています。

それでも今なお主従関係という言葉が使われ続けているのは、かつて広く普及した情報が書籍やメディアを通じて伝わり続けているからです。

また、一見すると効果があるように見える場面もあるため、誤った理論であることに気づきにくいという側面もあります。

現在の動物行動学ではどう考えられているのか

現在の動物行動学では、犬に「支配」や「序列」といった概念を当てはめることは適切ではないとされています。

なぜなら、犬は人間との共生の中で独自の社会性を発達させてきた動物であり、オオカミの群れとは異なる行動原理を持っているからです。たとえば、犬が飼い主よりも先に歩くのは「支配欲」ではなく、単に興味があるものに引き寄せられているだけかもしれません。

このように、犬の行動を上下関係で説明するのではなく、学習理論や環境要因から理解することが重要視されています。

つまり、犬にとって必要なのは「支配されること」ではなく、安心できるルールと信頼できる関係性なのです。

「犬にナメられている」と感じる行動は本当に上下関係の問題なのか

「うちの犬、私のことナメてるのかも……」と感じたことがある飼い主さんは多いでしょう。

しかし、その行動を「ナメられている=上下関係の問題」と捉えるのは早計です。

ここでは、飼い主がナメられていると感じやすい行動と、その本当の理由についてお伝えしていきます!

飼い主が「ナメられている」と感じやすい代表的な行動

飼い主がナメられていると感じる行動には、いくつかの共通パターンがあります。

たとえば、呼んでも来ない、指示を無視する、散歩中に引っ張る、家族の中で特定の人の言うことだけ聞かない、などです。こうした行動を目の当たりにすると、「自分のことを下に見ているのでは?」と不安になるのも無理はありません。

しかし、これらはあくまで犬の行動であり、必ずしも「ナメている」という感情を伴うものではないのです。

その行動を上下関係で説明してしまう危険性

犬の行動を「ナメられている」という上下関係で解釈してしまうと、間違った対応をしてしまう危険があります。

たとえば、「犬を従わせるために厳しくしなければ」と考え、力で押さえつけたり怒鳴ったりしてしまうケースです。こうした対応は、犬に恐怖や不安を与え、かえって関係を悪化させる原因になります。

さらに、犬が本当に困っていることや不安に思っていることに気づけなくなり、問題行動がエスカレートすることもあります。

上下関係という視点だけで犬を見てしまうと、犬の本当の気持ちや状態を見落としてしまうのです。

犬の行動は「支配」ではなく別の理由で起きている

犬が指示を聞かない理由は、支配欲ではなく、もっと単純なことが多いです。

たとえば、指示の意味が理解できていない、集中できる環境ではない、過去の経験から学習した結果、などが挙げられます。散歩中に引っ張るのは「リーダーになろうとしている」のではなく、単に外の刺激に興奮しているだけかもしれません。

また、呼んでも来ないのは「飼い主を軽視している」のではなく、「来ることのメリットを感じていない」だけの可能性もあります。

このように、犬の行動には必ず理由があり、それを正しく理解することが関係改善の第一歩になります。

主従関係を信じた結果、飼い主がやってしまいがちな危険なしつけ

主従関係を重視するあまり、誤ったしつけを行ってしまう飼い主は少なくありません。

一見すると効果があるように見えても、長期的には犬との関係を壊してしまう危険性があります。

ここでは、主従関係という誤解が招く具体的なNG行動と、そのリスクについてお話ししていきます!

「主従関係を作るため」として行われがちな行動

主従関係を意識したしつけには、いくつかの典型的なパターンがあります。

たとえば、犬より先に食事をする、犬を仰向けにして押さえつける(アルファロール)、散歩では必ず飼い主が先に歩く、などです。また、犬が吠えたり唸ったりしたときに、力ずくで黙らせようとする行動も含まれます。

こうした行動は「犬に自分が上だと示すため」という理由で行われることが多いですが、実際には犬にとって意味のない、あるいは有害な行動になっている場合がほとんどです。

一時的に効果があるように見えてしまう理由

誤ったしつけ方法でも、一時的に犬が従うように見えることがあります。

それは、犬が恐怖や不安を感じて行動を抑えているだけだからです。たとえば、怒鳴られたり叩かれたりした犬は、その場では静かになるかもしれません。

しかし、それは「飼い主を信頼して従っている」のではなく、「怖いから動けない」という状態に過ぎません。

このような表面的な変化を「しつけがうまくいった」と勘違いしてしまうと、犬にとって安全な環境を奪い続けることになります。

長期的に犬との関係を壊してしまうリスク

恐怖や力で押さえつけるしつけは、犬との信頼関係を根本から壊してしまいます。

犬は次第に飼い主を「怖い存在」として認識し、近づくことを避けるようになったり、防衛的に攻撃性を示すようになったりすることもあります。さらに、不安やストレスが蓄積されることで、分離不安や過度な警戒心といった問題行動が新たに生まれるケースも少なくありません。

こうしたリスクは、主従関係という誤った認識に基づいたしつけを続ける限り、避けられないものです。

犬との関係は、支配ではなく信頼の上に築かれるべきなのです。

犬が安心して従えるのは「支配」ではなく〇〇だった

犬が飼い主の指示を素直に受け入れるために必要なのは、支配ではなく「信頼」と「安心」です。

ここでは、犬が人の言うことを聞きやすくなる条件と、本当の意味でのリーダーシップについてお伝えしていきます!

犬が人の指示を受け入れやすくなる条件

犬が指示を受け入れやすくなるのは、その指示に従うことで「良いことが起こる」と学習しているときです。

たとえば、「おすわり」ができたらおやつがもらえる、呼ばれて戻ったら褒められる、といった経験が積み重なることで、犬は自発的に行動するようになります。また、日常生活の中で安定したルールがあり、予測可能な環境が整っていることも重要です。

こうした環境では、犬は「何をすればいいのか」を理解しやすく、ストレスなく行動できるようになります。

つまり、犬にとって必要なのは「明確な学習の機会」と「安心できる環境」なのです。

「リーダーシップ」と「支配」の決定的な違い

リーダーシップと支配は、まったく異なる概念です。

支配とは、力や恐怖によって相手を従わせることを指します。一方、リーダーシップとは、相手が自発的に従いたくなるような信頼と安心を提供することです。

犬にとって良いリーダーとは、一貫性のある行動をとり、犬が困ったときに頼れる存在である人のことを指します。

こうしたリーダーシップを持つ飼い主のもとでは、犬は安心して行動でき、結果として指示にも従いやすくなります。

犬にとって安心できる飼い主の共通点

犬が安心できる飼い主には、いくつかの共通点があります。

まず、一貫性があること。同じ行動に対して毎回同じ反応をすることで、犬は「何が正しいのか」を学習しやすくなります。次に、感情的にならず冷静であること。

また、犬の気持ちを理解しようとする姿勢も大切です。犬が何を求めているのか、何に困っているのかを観察し、適切にサポートできる飼い主は、犬にとって信頼できる存在になります。

こうした飼い主のもとで育った犬は、問題行動を起こしにくく、穏やかで安定した性格に育ちやすいのです。

今日からできる、犬との関係を安定させる具体的な関わり方

犬との関係を良くするために、今日からできることはたくさんあります。

ここでは、すぐに実践できる具体的な方法をご紹介していきます!

叱るよりも先に整えるべき生活ルール

犬との生活では、叱る前に「犬が正しい行動をとりやすい環境」を整えることが重要です。

たとえば、散歩の時間や食事の時間を一定にする、遊びやトイレの場所を決めておく、といった日常のルールを明確にすることで、犬は安心して行動できるようになります。また、犬が問題行動を起こしやすい状況をあらかじめ避けることも有効です。

こうした環境づくりは、犬にとっても飼い主にとってもストレスを減らす効果があります。

叱ることよりも、まずは「犬が困らない環境」を用意してあげることが大切なのです。

犬に伝わりやすい指示と伝わりにくい指示

犬に指示を出すときは、シンプルで一貫性のある言葉を使うことが重要です。

たとえば、「おすわり」という指示を出すときに、ある日は「すわって」、別の日は「座りなさい」と言い方を変えてしまうと、犬は混乱してしまいます。また、長い文章での指示も犬には伝わりにくいです。

一方、短くはっきりした言葉で、毎回同じ言い方をすることで、犬は指示の意味を理解しやすくなります。

さらに、指示を出すタイミングも重要で、犬が集中できる状態で伝えることが成功の鍵になります。

問題行動を「起こさせにくくする」考え方

問題行動を減らすには、「叱って直す」よりも「起こさせない工夫」が効果的です。

たとえば、家具を噛んでしまう犬には、噛んでもいいおもちゃを用意し、噛む欲求を満たせる環境を作ることが大切です。飛びつきが気になるなら、興奮しやすい場面では落ち着くまで距離をとるといった対応が有効です。

このように、問題行動が起きる前に対処することで、犬も飼い主もストレスを減らすことができます。

犬にとっても、叱られることが少ない生活の方が安心して過ごせるため、結果として関係も安定していきます。

【さらに知りたくなる人へ】それでも問題行動が改善しない場合の考え方と相談先

ここまでの方法を試してもうまくいかない場合は、専門家の力を借りることも選択肢の一つです。

ここでは、自力で解決しようとすべきではないケースと、専門家に相談するメリットについてお伝えしていきます!

家庭だけで解決しようとしてはいけないケース

すべての問題を家庭内だけで解決しようとするのは、かえって状況を悪化させることがあります。

特に、犬が攻撃性を示している、分離不安が深刻、パニック状態になりやすい、といったケースでは専門的な知識が必要です。また、飼い主自身が犬の行動に恐怖や不安を感じている場合も、無理に対処しようとせず専門家に相談することをおすすめします。

こうした状況では、適切な対応をしないと犬も飼い主も傷ついてしまう可能性があります。

早めに専門家の力を借りることが、問題解決の近道になるのです。

専門家に相談することで何が変わるのか

専門家に相談することで、犬の行動を客観的に分析してもらえます。

動物行動学に基づいた正しい知識を持つトレーナーや獣医師は、問題の原因を見極め、具体的な改善策を提案してくれます。また、飼い主自身の接し方や環境の整え方についてもアドバイスを受けられるため、根本的な解決につながりやすいです。

さらに、第三者の視点を入れることで、飼い主が気づかなかった問題点が見えてくることもあります。

専門家のサポートを受けることは、犬との関係をより良くするための大きな一歩になります。

まとめ

犬と飼い主に主従関係は必要ありません。

現在の動物行動学では、犬を支配するのではなく、信頼と安心を基盤とした関係を築くことが推奨されています。犬が指示を聞かないのは「ナメている」からではなく、学習の機会や環境が整っていないことが原因であることがほとんどです。

主従関係にこだわった誤ったしつけは、一時的には効果があるように見えても、長期的には犬との信頼関係を壊してしまいます。

大切なのは、犬にとって安心できるルールを用意し、一貫性のある関わり方をすることです。そして、問題行動が改善しない場合は、無理をせず専門家に相談することも視野に入れてみてください。

愛犬との毎日がより穏やかで信頼に満ちたものになるよう、今日からできることを一つずつ実践してみてくださいね!