「愛犬を叱ったら怖がられてしまった……」「叱り方がわからず、つい感情的になってしまう」そんな悩みを抱えている飼い主さんは多いのではないでしょうか。

犬のしつけにおいて叱ることは必要な場面もありますが、方法を間違えると信頼関係が壊れてしまうリスクがあります。

この記事では、犬を尊重しながらも「ダメ」をしっかり伝える正しい叱り方について、基本ルールや具体的なポイントをお伝えしていきます。愛犬との絆を深めながら、安全で快適な生活を築いていきましょう!

犬を尊重する「叱り方」とは?怒ることとの決定的な違い

まず理解しておきたいのが、「叱る」と「怒る」は根本的に異なるということ。ここでは、犬を尊重する叱り方の本質について見ていきます。

「怒る」と「叱る」はまったく別物

「怒る」と「叱る」は似ているようで、実はまったく別の行為です。

怒るというのは、飼い主自身の感情を犬にぶつける行為を指します。一方、叱るとは冷静に「その行動はダメだよ」と伝える教育的なコミュニケーションのこと。

たとえば、犬がゴミ箱をひっくり返したとき、「何やってるの!」と大声で怒鳴るのは「怒る」に該当します。しかし、低い声で「ダメ」と短く伝え、その後正しい行動を教えるのが「叱る」という行為です。

犬には人間の言葉の意味は理解できません。だからこそ、感情的な怒りではなく、一貫したルールとして叱ることが大切なのです。

犬を尊重するとは「甘やかす」ことではない

「犬を尊重する」と聞くと、何でも許してあげることだと思われがちです。

しかし、尊重するとは犬の習性や気持ちを理解したうえで、適切に導いてあげることを意味します。なぜなら、犬にとって明確なルールがある環境こそが、安心して暮らせる場所だからです。

たとえば、犬が飛びついてきたとき、「かわいいから」と放置するのは尊重ではありません。むしろ、飛びつかなくても愛情を得られる方法を教えてあげるほうが、犬の社会性を育て、結果的に犬自身の幸せにつながります。

甘やかしと尊重は似て非なるもの。このように、適切な境界線を示すことが真の尊重といえるでしょう。

叱り方次第で信頼関係は壊れも、深まりもする

叱り方ひとつで、犬との関係性は大きく変わります。

感情的に怒鳴ったり、理不尽なタイミングで叱ったりすると、犬は飼い主を「怖い存在」と認識してしまいます。一方、冷静で一貫性のある叱り方は、犬に安心感を与え、「この人は信頼できるリーダーだ」という認識を育てるのです。

実際、適切に叱られた犬は問題行動が減少し、飼い主への信頼度が高まるという研究結果もあります。ちなみに、叱ったあとに正しい行動を褒めるという流れを繰り返すことで、犬は「何をすれば良いか」を自然と学んでいきます。

このように、叱り方は信頼関係を左右する重要な要素。正しい方法を身につけていきましょう!

犬を尊重して叱るべき”本当に必要な場面”とは

すべての問題行動を叱る必要はありません。ここでは、本当に叱るべき場面と、そうでない場面の見極め方についてお話ししていきます。

叱っていいのは「命・安全・社会生活」に関わるときだけ

叱るべき場面は、基本的に3つのカテゴリーに限られます。

1つ目は命に関わる行動です。たとえば、道路に飛び出す、拾い食いをするといった行動は即座に叱る必要があります。

2つ目は安全に関わる行動。他の犬や人に噛みつく、飼い主の指示を無視して危険な場所へ行くなどがこれに該当します。

そして3つ目が社会生活に関わる行動。過度な吠え、他人への飛びつき、公共の場での排泄など、周囲に迷惑をかける行動がこれにあたります。

これらは犬自身や周囲の安全を守るため、しっかりと「ダメ」を伝える必要がある場面です。

飼い主の都合や感情で叱ってしまいがちな場面

一方で、飼い主の都合で叱ってしまいがちな場面も存在します。

たとえば、ソファに乗る、寝室に入る、遊んでほしくてちょっかいを出すといった行動です。なぜなら、これらは犬にとって自然な行動であり、「ダメ」と決めているのは飼い主側だからです。

こうした場面では、叱るよりも環境を整えたり、代わりの行動を教えたりするほうが効果的。たとえば、ソファに乗せたくないなら専用のベッドを用意し、そこで休むことを褒めて定着させるという方法があります。

自分の感情や都合を優先していないか、一度立ち止まって考えてみることが大切です。

叱らなくていい行動を見極める視点

叱るべきかどうか迷ったときは、次の3つの視点で判断してみてください。

まず、その行動は本当に危険か。命や安全に関わらないなら、叱る必要はないかもしれません。

次に、犬にとって自然な行動かどうか。掘る、噛む、においを嗅ぐといった本能的な行動は、叱るのではなく適切な発散方法を提供するべきです。

最後に、飼い主の都合だけで禁止していないか。たとえば「静かにしてほしいから吠えるな」という理由だけなら、吠える原因を探り、解決策を考えるほうが建設的といえます。

このように、叱る前に一呼吸置いて考える習慣をつけてみてください!

犬を傷つけない叱り方の基本ルール【声・言葉・タイミング】

叱り方には明確なルールがあります。ここでは、犬に正しく伝わる叱り方の基本要素を具体的に見ていきましょう。

声のトーンは「低く・短く・一定」が基本

叱るときの声のトーンは、犬への伝わり方を大きく左右します。

基本は「低く・短く・一定」です。なぜなら、低い声は犬にとって注意を促すシグナルとして認識されやすいからです。

たとえば、「ダメ」と伝えるとき、高い声で「ダメよ~」と言うと犬は遊びだと勘違いしてしまいます。しかし、低く落ち着いたトーンで「ダメ」と一言だけ発すれば、犬は「これはいけないことだ」と理解しやすくなるのです。

また、長々と説教するのは逆効果。犬は言葉の意味ではなく、声のトーンや長さで判断するため、短く明確に伝えることが重要です。

一貫したトーンで叱ることで、犬は混乱せずルールを学んでいきます。

叱る言葉はシンプルに統一する

叱る際の言葉は、シンプルかつ統一することが大切です。

「ダメ」「ノー」「いけない」など、家族全員が同じ言葉を使うようにしましょう。なぜなら、言葉がバラバラだと犬は何が禁止されているのか理解できないからです。

たとえば、ある日は「やめなさい」と言い、別の日は「こら」と言うといった具合に言葉を変えてしまうと、犬にとっては別の指示に聞こえてしまいます。一方、常に「ダメ」で統一すれば、その言葉と行動の関連性を学習しやすくなるのです。

さらに、叱る言葉は1~2音節の短いものが理想的。長い文章で説明しても、犬には伝わりません。

このように、シンプルで一貫した言葉選びを心がけてみてください!

タイミングを間違えると、犬には伝わらない

叱るタイミングは、効果を左右する最重要ポイントです。

犬は「今この瞬間」にしか結びつけられないため、問題行動が起きた直後、できれば2~3秒以内に叱る必要があります。なぜなら、時間が経ってから叱っても、犬は何について叱られているのかわからないからです。

たとえば、留守中にゴミ箱を荒らされていたとして、帰宅後に叱ったとしましょう。しかし、犬にとっては「帰ってきた飼い主に叱られた」と認識され、ゴミ箱を荒らしたことと結びつきません。

理想は、問題行動をしている最中に「ダメ」と伝えること。ちなみに、タイミングを逃してしまったら、その場では叱らず、次回同じ場面で注意するほうが効果的です。

タイミングを意識するだけで、叱る効果は格段に上がります。

叱ったあとは必ず「正解の行動」で終わらせる

叱るだけで終わらせてはいけません。

叱ったあとは必ず、正しい行動を教えて褒めるという流れで締めくくりましょう。なぜなら、叱られただけでは犬は「何をすれば良いか」がわからず、不安や混乱を抱えてしまうからです。

たとえば、飛びつきを「ダメ」と叱ったあと、「オスワリ」を指示してできたら褒めるという流れです。これにより、「飛びつく=ダメ」「座る=良いこと」という対比を犬は学習します。

実際、この方法を実践すると問題行動の再発率が大幅に下がるというデータもあります。叱ることは通過点であり、ゴールは正しい行動を定着させることだと覚えておきましょう。

このように、叱りっぱなしではなく、必ずポジティブな終わり方を意識してみてください!

逆効果になるNGな叱り方|信頼関係を壊す行動とは

良かれと思ってやっていることが、実は犬との関係を壊しているかもしれません。ここでは、絶対にやってはいけないNG行動を取り上げていきます。

感情的に怒鳴る・長々説教する

感情的に怒鳴ることは、最もやってはいけない行動のひとつです。

大声で怒鳴ると、犬は恐怖を感じて萎縮してしまいます。なぜなら、犬には言葉の内容ではなく、飼い主の感情的なエネルギーだけが伝わるからです。

たとえば、「何回言ったらわかるの!」「どうしていつもこうなの!」と長々説教しても、犬には一切意味が伝わりません。むしろ、飼い主が興奮している状況に不安を覚え、「この人は怖い」と学習してしまいます。

また、感情的な叱責を繰り返すと、犬は飼い主の顔色を伺うようになり、主体的に行動できなくなってしまうのです。

冷静さを保つことが、効果的な叱り方の大前提といえます。

時間が経ってから叱る

時間が経過してから叱ることも、完全に逆効果です。

犬は過去と現在を結びつける能力が非常に限定的なため、数分前の行動でさえ理解できません。なぜなら、犬の記憶は「状況と感情のセット」で保存されており、時系列での因果関係は認識しにくいからです。

たとえば、朝いたずらしたことを夜になって叱ったとします。しかし犬にとっては「夜に突然叱られた」という経験になり、何が悪かったのか全く理解できないのです。

その結果、犬は混乱し、飼い主への信頼を失っていきます。ちなみに、「反省している顔をしている」と感じるのは人間の思い込みであり、実際は飼い主の怒りに怯えているだけというケースがほとんどです。

即座に叱れなかった場合は、その件については叱らないという判断も大切になります。

名前を呼びながら叱る

名前を呼びながら叱ることは、絶対に避けるべき行為です。

「ポチ、ダメでしょ!」「タロウ、こら!」というように名前と叱責をセットにすると、犬は自分の名前を「嫌なことの合図」として認識してしまいます。なぜなら、名前と叱られる経験が結びついてしまうからです。

その結果、名前を呼んでも振り向かない、呼び戻しに応じないといった問題が発生します。たとえば、散歩中に名前を呼んでも無視されるようになったら、それは名前に対するネガティブな印象が原因かもしれません。

名前は本来、犬にとって「良いことが起こる合図」であるべきもの。叱るときは名前を呼ばず、「ダメ」などの指示語だけを使うようにしましょう。

このように、名前の使い方ひとつで犬との関係性は大きく変わります。

体罰や強い威圧がもたらすリスク

体罰や強い威圧は、一時的に行動を抑制できても、長期的には深刻な問題を引き起こします。

叩く、押さえつける、首輪を強く引っ張るといった体罰は、犬に恐怖心とストレスを植え付けます。なぜなら、痛みや恐怖で行動を抑制する方法は、犬の心理的安全性を根本から破壊するからです。

たとえば、体罰を受けた犬は攻撃的になったり、逆に過度に萎縮したりするケースが報告されています。さらに、飼い主だけでなく人間全般に対して不信感を抱くようになり、社会性が損なわれることもあるのです。

また、体罰は一時的な効果しかなく、問題行動の根本原因を解決しません。ちなみに、現代の動物行動学では、体罰は教育手段として完全に否定されています。

犬の心と体を傷つけない方法を選ぶことが、飼い主の責任といえるでしょう。

叱るより大切なこと|犬に「正解の行動」を教える方法

実は、叱ることよりも正しい行動を教えることのほうがはるかに重要です。ここでは、犬に「何をすれば良いか」を伝える具体的な方法をお伝えしていきます。

犬は「ダメ」だけでは何をすればいいかわからない

「ダメ」だけを伝えても、犬は次にどう行動すれば良いかわかりません。

たとえば、「飛びつくな」と叱られても、犬には「じゃあ何をすればいいの?」という疑問が残ります。なぜなら、禁止された行動の代わりにどうすれば良いかを教えられていないからです。

これは人間に置き換えてもわかりやすいでしょう。「それはダメ」とだけ言われて「じゃあどうすればいいんですか?」と聞き返したくなった経験は誰にでもあるはずです。

犬も同じで、禁止だけでは行動を変えられません。むしろ、「こうすればいいんだよ」という正解を示してあげることで、犬は迷わず望ましい行動を選べるようになります。

叱ることと教えることはセットだと覚えておきましょう。

望ましい行動を先に教えるという考え方

問題行動を叱る前に、望ましい行動を教えておくという方法があります。

これは「予防的しつけ」とも呼ばれ、問題が起きる前に正しい行動パターンを定着させるアプローチです。なぜなら、犬は一度覚えた行動パターンを繰り返す傾向があるため、最初から正しい行動を教えておけば問題行動自体が発生しにくいからです。

たとえば、来客時に吠える前に「マットで待つ」というルールを教えておきます。そして、来客があるたびにマットに誘導して褒めるということを繰り返すのです。

すると、犬は「来客=マットで待つ」というパターンを自然と学習し、吠えるという選択肢を選ばなくなります。ちなみに、この方法は叱るストレスもなく、犬も飼い主も気持ちよく過ごせるというメリットがあります。

このように、先回りして教えることが最も効率的なしつけといえるでしょう!

小さな成功体験を積ませるコツ

犬に正しい行動を定着させるには、小さな成功体験を積み重ねることが鍵です。

まずは簡単にできることから始め、確実に成功させて褒めるという流れを作りましょう。なぜなら、成功体験は犬の自信とやる気を育て、学習意欲を高めるからです。

たとえば、「オスワリ」を教えるとき、最初は1秒座れただけでも大げさに褒めます。そして徐々に座る時間を延ばしていくという段階的なアプローチが効果的です。

また、成功したらすぐに褒めることも重要。タイミングが遅れると、何について褒められているのか犬には伝わりません。

さらに、失敗したときは叱らず、もう一度やり直すチャンスを与えることも大切です。このように、成功を積み重ねる環境を整えることで、犬は自然と望ましい行動を選ぶようになります。

小さな一歩を大切にしてあげてください!

「尊重するしつけ」がうまく回り始める瞬間

犬を尊重するしつけは、ある瞬間から劇的にうまく回り始めます。

それは、犬が「この人と一緒にいると良いことがある」と理解したときです。なぜなら、その瞬間から犬は飼い主の指示を「従わされるもの」ではなく「一緒に成功するための道しるべ」として受け取るようになるからです。

たとえば、毎日の散歩や遊びの中で、小さな指示と褒めることを繰り返していると、ある日突然犬の表情が変わります。飼い主を見る目が「何を言われるんだろう」から「何をすればいいか教えて」という積極的なものに変わるのです。

この変化が起きたとき、しつけは「やらされるもの」から「楽しいコミュニケーション」へと進化します。ちなみに、この段階に達すると問題行動は自然と減少し、新しいことを教えるスピードも格段に上がります。

焦らず、犬との信頼関係を丁寧に育てていきましょう!

まとめ

犬を尊重する叱り方とは、感情的に怒ることではなく、冷静に「ダメ」を伝え、そのあと正しい行動を教えるという一連の流れのことです。

叱るべき場面は命・安全・社会生活に関わるときのみであり、声のトーンは低く短く一定に保ち、タイミングを逃さず叱ることが重要になります。

また、叱るだけでなく望ましい行動を教え、小さな成功体験を積ませることで、犬は自然と正しい選択ができるようになるのです。

愛犬との信頼関係を大切にしながら、焦らず一歩ずつしつけを進めてみてください。そうすることで、犬も飼い主もストレスなく、幸せな毎日を過ごせるようになりますよ!